top of page

【7月号】畑で調理する




農作業を終えて、トマトの芽かき後に手に残るいい香りが気になるこの頃のゆうです。冬場は長野の酒蔵で、華やか系の香り高いお酒を仕込んでいます。


農場では、春菊から三つ葉まで野菜本来の華やかな香りもありますが、それ以外にも様々な香りが存在します。去年あたりから徐々に土作り(施肥)に関わるようになり、今年は去年以上に土作りに関わらせて貰い、堆肥の匂いをふんだんに纏うようになりました。 その中には、BLOF堆肥、個人的には木樽の赤ワインを想わせるような、まるで、幼いころ食べた木苺を成熟させたような、そんな香り。特徴は、高品質・高収量・高栄養の根本を担う肥料です。また、オーガニック8:5:3は、鰹節をさらに濃縮した様な香り。特徴は、水溶性で速攻力が優れているので、果菜類やケールの追肥によく使用しています。さらに、キノコの廃菌床を使用して作られたダイシンは、強い香りのため、衣類などに染み込むと、なかなか香りが取れません。施肥作業を終えて戻ってくると、隣人にダイシン臭いって気づかれるレベルです。初めてダイシンに触れたときの発酵熱の衝撃を今でも覚えています。状態にもよるけど40度から50度ぐらいあります。土壌中に生息する微生物(放線菌)の白く纏っている菌糸の様子や、香り、土の表面、触れた時の皮膚の感覚を通し、菌が活発な様子が伺えます。冬場の酒蔵で麹・酛造りに携わっている身としては、職種は違うけど、菌類に交わり歩んでいる事が楽しく感じています。


のらくら農場では、土壌分析や過去の作物のデータから施肥設計された資料を元に、施肥チームが主に肥料を散布します。香り豊かな堆肥やミネラル系資材の施肥は、僕のイメージでは調理の味付け作業に近いイメージで散布しています。畑で調理する!そんな想いで、調味料を適切なさじ加減でまんべんなくムラなく撒くイメージです。最終イメージ(作物)が何になるのか。収穫風景や播種風景の後の工程をイメージすると、モチベーションも上がるし、作業が楽しく感じられるので、そのあたりも重要だったりします。そんな過程を経て収穫された野菜たちは、旨みがあり濃い味がします。畑で調理されているため、ちょっと味を加えるだけで、美味しい料理になります。ある意味シェフいらずです。


先日、やーさん、かけちゃん、ぼくの三人で、畑で施肥(いわば調理作業)を行いました。始まる前に3人での円陣(軽いミーテング)が行われ、施肥設計に誤りはないか。どういう順番でどの手段で撒いていくのかを打ち合わせします。今回は、肥料散布機の自走マニアスプレッダ(newSD)と自走コンポキャスタ(コンポ)の二種を使用。農場では、この散布機さんたちを短時間に広い面積を散布するため使用しております。資材の特徴に合われて散布機さんを使い分けたり、手撒きのサンパーという道具を使用したりします。それらを誰が何をまくかも含めて軽く話し合います。 かけちゃんが「俺コンポ行きます!」と先陣をきり、それにつられやーさんが「ゆうさん前コンポやりたいって言っていたからコンポやりませんか?」的なことを提案する。ぼくは「出荷多そうだから、素早く終わるように、慣れているかけちゃんがやるべき」と発言し、かけちゃんは「やりたいという意志を尊重するべき」と主張した。かけちゃんの一言もありチームの合意のもと、今回ぼくがコンポをやることに決定し、newSDはやーさんがやる事に。数tもある堆肥の運び屋はかけちゃんがやることに決定。何も揉めることもなくスムーズに決まり、自分もそれに応えて素早くおわるように、精一杯頑張る。軽トラでの移動中や小分け時のささやかなやり取り、賄いでの同じごはんを食しての会話などなどで、コミュニケーションを築き、フラットな環境だからなせるワザなのかと振り返って考えさせられます。作業の前後で、散布量を調整するシャッターが最適かどうか、施肥メンバーで確認し、ベテランスタッフにも確認をとる。堆肥の状態や風にも影響を受けるので、そのあたりも踏まえて現場でも微調整する。のらくらでは、確認を取りやすい雰囲気、コミュニケーションが取りやすい環境が、ミス防止や良いもの造りに繋がっている。この先の社会において、対等で壁のないフラットな職場が今後問われる気がします。


施肥を終え、その香りを纏いながら、ふと思い出す事があります。それは、冬場酒蔵で仕込んでいるタンクから放つ香り。日本酒を作るときに生まれる成分のカプロン酸エチル、その青りんごを想わせる香りが、醪(どぶろくみたいなお酒をしぼる前の状態)から解き放たれている瞬間。やっぱり心が疼く。酒造りもやめられない。

これから、トマトをはじめピーマン、ズッキーニと夏野菜が獲れはじめ、彩り豊かになります。猛暑が続く中、観測史上最速の梅雨明けと隣の佐久市では最高気温が観測史上初の37度を超えたことがニュースになっていました。一転して今度は梅雨が戻ってきたような蒸し暑さですが、暑さに負けないようこの先も美味しい野菜を提供していきたいです。


ゆう

bottom of page